いちばんいいところを見て暮らす。

Concept12

丘の上のちいさいおうち

『子供の頃から大好きだった本に出てくるような家に住みたいんです。』
初めての打合せでの奥様からいただいたリクエスト。
その本自体は存じあげなかったので、自分の仕事のルーツとなった絵本のことをお話ししたら、奥様もその本がお好きということで意気投合。
共通の言語が出来るとそのあとの話はスムーズに進むものです。
そして本の主人公と同じようにご夫婦二人で暮らすのにちょうどいいサイズと、家の真ん中にあるクローゼットの上の「舞台やぐら」のようなロフトを中心にコンパクトで動き回りやすい「ちいさいおうち」になりました。

また今回建築する敷地は東西に奥行きがある分譲地の一番後ろの土地。
将来的に前に建物が建っていくのは避けられない状況の中で真っ先に考えたのは“建物を斜めに振る”こと。

こうすることで景色はもちろん一年中効率よく日差しも入り、将来建つであろうお隣さんの建物もあまり気にならずに暮らしていただけるのではないかと考えました。
また庭先も広く取れます。
土地の形状や向き、セオリーにとらわれずその土地の「いちばんいいところ」を見て暮らしてもらえるように建物を考える、これも我々の重要な仕事。
今回はそんな提案をしてみました。

  1. 建築概要
  2. 仕様
  3. D・I・Y
  4. キッチン&水廻り
  5. こだわり
  6. 照明器具
  7. コンセプト45°

「丘の上のちいさいおうち」

  • 建設地:山梨県北杜市大泉町
  • 建築面積:83.97㎡(25.40坪)
  • 延べ床面積:82.79㎡(25.04坪)
  • 主用途:一戸建ての住宅
  • 構造:木造・在来工法・平屋建て

無垢の木材と金属のハイブリット

今回はお客様やビルダーさんと十分お話し合いをして、外壁に関してはメインの見せ場部分は無垢の杉板張りにして、裏に当たる北面や西面はガルバリウムのサイディング張りにしました。
当初全面板張りを希望されていた旦那様、でも将来のメンテナンスを考えると出来るだけ面積は少ない方が良いだろうということでそういうハイブリッドな仕様になりました。
また標高が高く、北面や西面は風が影響を受ける部分でもあるのでサイディング張りにすることで断熱性能も上がると思います。
さらに材料の無駄が多い妻壁の三角の部分も塗り壁仕様にして無駄とメンテナンスの手間を減らすようにしてみました。

内装は天井と腰壁、床は無垢のパイン材、腰上の壁はお客様がD・I・Yされる部分以外はコストの安いクロス張りとなっています。
また足場の必要になりそうな壁の高い部分もクロス張りになってます。

友人ビルダーと造るセミセルフビルドの家

今回は当初からお客様のご要望で施工は長年の友人のビルダーさんにお願いしたいということでした。
しかもそのビルダーさん、実は本業はペンションのオーナーさん。
でも素敵な自宅をセルフビルドで作ったり、他にも木工事を請け負ったりしている手練れのビルダーでもあります。
そしてコストを抑えるため壁の仕上げやデッキ作り等はご自分たちでやりたいとのことでした。
ということで壁の珪藻土塗りの部分は下地処理までとし、その他木部の塗装や床のワックス塗り等はご自分たちでこれから楽しみながらやっていただきます。
出来ないところはプロに任せ、出来るとことは自分でやる、そうやって自分たちなりのリズムで家を仕上げていくっていうのは素敵なことだし、そういうD.I.Y思考の方たちのお手伝いもしたいと思っています。

コンパクトで必要十分なサイズと車椅子対応の動線

キッチンはお二人暮らしに必要十分なサイズのシンプルなI型のシステムキッチンを設えました。
また壁付けにすることでコンパクトなLDKの使い勝手の自由度を高めています。
さらにキッチンの隣にパントリーを設置、LDKが雑然としないようになっています。

LDKと寝室から行き来できるコンパクトにまとめた水廻りスペース。
大きめの引き戸にして万が一の時、車椅子でも生活がしやすいようにもなっています。
ここが通り抜けられることにより、真ん中のクローゼットを中心に家中を行き止まりなく動き回ることも出来ます。
冗談でロフトを使えば盆踊りが出来るかもねなんて話にも。

浴室はシンプルで清潔感のあるユニットバスになっています。
窓を開ければ林の木立を見ながら入浴も出来ます。

ロフトとクローゼット

今回のコンセプトの一つでもある家の中心にあるクローゼットとロフト。
真ん中のクローゼットに置くことでパブリックスペースでもあるLDKとプライベートスペースである寝室の二つの空間の仕切り役にもなっています。
こうすることで家をアバウトに区切りつつも空間に広さを感じさせることができ、また間仕切りが無いことで家全体を一つの空間とを出来るので温度差の無い空調計画ができます。
事実、窓を開けていれば風向きに関係なく家の何処に居ても風を感じることが出来ます。まさに全ての窓が家の為に機能するということです。
また大き目のクローゼットを何処からでもアクセスしやすい真ん中に置くことで各部屋に個別の収納が必要なくなり、空間を広く使うのにひと役かっています。
そしてLDKと寝室の緩衝スペースにもなっている階段スペース、壁はお客様が自由にレイアウトできる書棚とし、日当たりと景色が心地いい縁側的なリラックススペースにもなるようにしてます。
冬場の部屋干しスペースとしてもご利用してもらえます。

そしてクローゼットの天井高を必要最低限に抑えることで階高を低くし、階段の段数を減らしスペースをコンパクトにし、その上のロフトの天井高も高く確保できるようにしています。
また奥の収納部分との床にあえて座るのにちょうど良い高さの段差を付けて、そこに座ると正面のピクチャーウインドウから素敵な風景が見えるようにしています。実はここがこの家の隠れ特等席だったりします。
一人になりたい時のちょっとした個室やゲストスペースに使っていただくように考えました。

レトロな傘と電球

当方の設計では定番になっているレトロなアルミの傘の駅舎用照明。
今回も玄関、庭先、LDKのペンダント照明で使用しました。
それにさらにフィラメントタイプのLED電球を付けることでさらにレトロ感を増して見ました。

透明ガラスとフィラメントの明かりってノスタルジーを感じるだけで無く、とても温かみも感じます。
最近はこういったお洒落なLED電球が手頃な価格で手に入るようになったのでありがたいです。
照明メーカーではなかなか無く、しかも安価で提供出来るこういう照明器具を積極的に採用していきたいと思っています。

土地のいちばんいいところを見て暮らす。

今回の計画の敷地は東西に奥行きがある分譲地の一番後ろの土地。
将来的に前に建物が建っていくのは避けられない状況の中で真っ先に考えたのは建物を斜めに振ること。
幸い西隣は防風林で半永久的に木が伐られることは無いし、北東側には広い空き地があり空が開けていてとてもいい景色が見られます。
お話があってから実際に設計の実働をするまで秋、冬、初夏と長い期間土地を見ることが出来たので、太陽の日差しがどう動くかも実際に観察し、日差しの面からも建物がどの方向を向くのが一番いいかも察しがつきました。
そこから位置出しも解りやすい南の隣地境界線に対し45°振るように建てれば良いのではという結論になりました。

これなら仮に前隣にどの位置に建物が建っても視界にあまり入らず気にならないし、建物が土地の対角線を向くことで平行に建てるより庭先も広がるし、長い期間の観察で得た日差しが一番効率よく入る向きにもなるし良いことづくめ。
何より窓から見えるのが一番良い景色になるということ。
居間や寝室はもとより、キッチンに立った時の北東側の広い空もまさにそう。
土地の形状や向き、セオリーにとらわれずその土地の一番良い面を向いて生活してもらえる向きに建物を提案するというのも我々の重要な仕事だと思っています。

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