「外」を取り込む、「季節」と暮らす。

Concept07

「外」を取り込む、「季節」と暮らす。  「素木家つくりの家 II」

夫婦二人でのんびり、時々子供の家族たちとにぎやかに過ごせる、薪ストーブと大きなウッドデッキのある山の家を作って欲しいというご依頼でした。
奥行きのとても長い敷地の前には散歩にもよく使われるそこそこ人通りと車の行き来が多いちょっと視線の気になる道路。
あまり建物を奥にしすぎず、かといって裏のスペースが無駄に大きくならないような配置をまず検討しました。
人目に付きやすい表の庭と人目につかないプライバシーの保てる庭を裏にもつくり、表の大きな窓からは表の庭や木立の景色を、さらに裏にも大きな掃出しの窓を取り付け、裏の庭や隣の防風林の木立の景色をリビングに取り入れるようなプランを考えました。
裏にだっていい面があります、素敵な木立の景色を見ないなんてもったいないです。
大きな窓に挟まれたLDKは外と一体感が感じられ、まさに「季節と暮らす」感覚で暮らしていただけると思います。
また片流れの屋根にして、水回りと寝室スペースの上部にロフトを設置。出来るだけ無駄に大きな吹き抜け空間が出来ないように配慮しつつ、開放感は感じられるようにしています。
また内外装をほとんど木材にすることで、木工事以外は基礎、電気、給排水設備、塗装工事だけというシンプルな業者構成とし、工期短縮や余分な経費も抑えることによりコストダウンも図っています。
無垢の木だけで作られた家という意味で「素木家(すきや)つくりの家」と名付けました。
コンパクトながらも開放感があり狭さを感じない「表も裏も楽しむ」家になっていると思います。

  1. 建築概要
  2. 仕様
  3. キッチン
  4. 設備
  5. 暖房設備
  6. ロフト
  7. こだわりポイント

「素木家つくりの家 II」

  • 建設地:山梨県北杜市大泉町
  • 建築面積:66.65㎡(20.16坪)
  • 延べ床面積:88.82㎡(26.87坪)
  • 主用途:一戸建ての住宅
  • 構造:木造・在来工法・平屋建て(ロフト付き)

素木家(すきや)つくり

屋根のガルバリウム鋼板以外、外装は杉板を使用。
また内部は床板は無垢のパイン材15mmのオイルステイン仕上げ、壁と天井は無垢の杉板15mm無塗装としました。
手が触れるような部分以外は無塗装とし、自然に色が変わっていくのを楽しんでいただくようご提案しています。
また建具はシナベニヤフラッシュ戸とし、取付場所をトイレ、水廻り、収納と最小限に抑えることによりコストダウンを図るのも「素木家つくり」の特徴です。

壁付け用I型キッチン

比較的コストの安い壁付けタイプのシンプルなI型キッチンを利用した対面キッチンとしました。
キッチンの背後には一坪の食品庫兼洗濯機置き場があります。
またキッチン脇の勝手口から裏の畑にダイレクトで行き来できます。
さらに細かいトピックですが、キッチンに立つとこの建物のすべての窓を見渡すことが出来ます。

コンパクトにまとめた水廻り

浴室、洗面脱衣室、トイレをコンパクトにまとめ、出入口を引き戸にすることにより車椅子での出入もし易くしてみました。
また洗面台の下をオープンにすることで車椅子での利用もし易くなっています。
まだまだご健康で介護の必要はないですが、将来必要になった際に最低限の改修で済むように考慮してあります。

浴室はシンプルで清潔感のある色の手入れのし易いユニットバスを設置。
大きな窓からは隣の防風林の林を眺めることができ、緑を楽しみながら入浴していただけます。
また当面別荘使いということで、水抜き作業のことも考え追い炊き機能は付けず、お湯の落とし込みタイプのユニットバスになっています。

薪ストーブ JOTUL(ヨツール)/F3

暖房設備は旦那様のたっての希望で薪ストーブを設置。
建物の大きさと予算に合わせコンパクトでシンプルな操作性のJOTUL(ヨツール)/F3タイプを選びました。
北欧製ということで信頼性もありますし、デザインも素敵だと思いますし、何より操作がとても簡単です。

片流れの天井の一番低いところに薪ストーブを置くことによって天井の勾配なりに暖かい空気が上がっていき、ロフトも暖められるように考慮しました。
実際お住まいになられて、到着してすぐは補助暖房として石油ファンヒーターは使うものの、薪ストーブが機能すればこれ一台で建物中が暖かくなるそうです。

また、日中は南側の大きな窓からの日差しで晴れた日は夕方まで暖房なしでも過ごせるそうです。

実は特等席だった


片流れの屋根の形状を利用して作ったロフト。10畳の広さに大きめの収納、その上にはちょっとしたロフト状の空間があります。
大きめの窓からは外の林を眺められ、LDKからはちょうどうまく視線が遮られプライバシーが確保されます。
当初、ゲストルームのスペースとしてこちらは想定しておりましたが、実際お住まいになられからはご夫妻の寝室になったそうです。
『ここが一番居心地がいい。』とい事でした。
何はともあれ居心地がいいと言われる事は光栄です。

あえて間仕切らない。裏の良いところを見て暮らす。

コストを抑えるために検討したことの中に“間仕切壁と建具を極力減らす”ということがあります。
空間を間仕切って個別の部屋を増やせばプライバシーは確保はされるものの、利用しなければ無駄な空間になりかねない。そして当然建物も大きくなっていくし、コストもかさむみます。
あえて間仕切をなくしオープンにし、空間に多様性を持たせれば無駄になることも減り、その時々で色々な方法で間仕切れば色々な使い方が出来る可能性が広がります。

今回は階段がその間仕切のキーポイント。LDKと寝室スペースの間に階段を挟むことでちょっとした目隠し役になっています。
ここにロールスクリーンを付けることで、普段はオープンにして開放的なワンルームのような使い方をし、寝室やゲストルームとして利用する場合はロールスクリーンで仕切ればコストは掛けずに空間を分け、多目的に使えます。
階段下のスペースは最初旦那様の書斎になっていましたが、その後は趣味のピアノ置き場に変わっていました。
【変化する暮らしに考える余地あるの住まい】つくりを心がけています。

裏庭って実は光が順光なので景色が一番綺麗に見えたりするのです。
しかしながら現実はお隣の境界が近かったりでなかなか注目されないのが“裏面”。でも裏にだっていい面があります。
今回は奥行きの長い敷地というある種デメリットの中で、裏庭を作ることでメリットを生み、大きな掃出し窓を付けることでそんな裏のいいところを取り入れて暮らせるようにしてみました。
見方を変えると知らなかった良い面が発見できたりするものです。

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