『とにかく明るくて暖かい、パンを焼くスペースとリビングが欲しいの。』
『俺はとにかく畳と掘りごたつのある和室があれば文句ない。』
気さくで豪快でバイタリティーのある明るい奥様と物静かな旦那様から頂いた、ある意味相反するリクエスト。
サンルームはあるものの購入した中古の建物のLDKが暗くて、使い辛くて嫌なのでなんとかして欲しいということから頂いた増築のお話でした。
ご夫妻それぞれのリクエストを限られた敷地の空きスペースで叶えるために考え出したのが建物を“くの字”にすること。こうすることで敷地に無駄無く納まり、お互いのスペースを日当たり良く明るくすることができます。
そして建物の曲がり部分には食品庫とクローゼットを配置することでデッドスペースを極力無くし無駄なく空間を使いました。
既存のキッチンはそのままに、新たな作業スペース隣接することでご希望のパン焼き作業も楽にできます。
何より明るくて暖かなリビングで大好きな庭を見ながら過ごしていただけます。また和室は明るい縁側ごしにお庭を見ることもできます。
障子を閉めればそれぞれの確立した二つの部屋になりますが、建物が曲がっていることで、開けたままでもお互いの気配を感じつつも存在を意識しないようになっています。
決して仲が悪いわけではないけれど、夫婦それぞれの居場所をつくる、暮らしの中でこれはとても大事なことかもしれません。
今回はそれぞれの願いが叶い、明るくて暖かなそれぞれの居場所ができて良かったと思います。
「増築の曲り家」
- 建設地:山梨県北杜市大泉町
- 建築面積:増築部分 54.22㎡(16.40坪)
- 延べ床面積:増築部分 54.22㎡(16.40坪)
- 主用途:一戸建ての住宅の増築
- 構造:木造・在来工法・平屋建て
それぞれの居場所に合う仕上げ
奥様の居場所であるLDKは床、腰壁、天井はパイン材、腰壁より上は珪藻土仕上げとなっています。
大きな掃出し窓と勝手口のガラスドアに加え、北向きの天井には天窓が二つあるので、明るい色の仕上げ材と相まってとても明るく、日差しもたっぷり入り暖かな空間になっています。
旦那様の居場所である和室は縁の畳や珪藻土の塗り壁、木彫の天井材などオーソドックスな和室の仕様になっています。
畳の一部にはご希望の掘りごたつ、障子を挟んでの広い縁側には檜の縁甲板を張りました。
また日当たりの良い縁側の下地には「パッシブ・スミターマル」という特殊な蓄熱材を敷き詰めています。
曲がり角のスペースを上手く使う
今回LDKと和室が曲がって配置されている為、曲がり角のところには多角形のスペースが生まれます。
そこにウォークインのクローゼットとコンパクトな食品庫を隣り合わせに作りました。
クローゼットの棚には市販の引き出し型の収納庫用品がぴったり収まるようにしてあり、また奥の扉からはバックヤードデッキに行き来できるようになっています。
また食品庫の食器棚の下には樽など重いものが置けるようになっています。
日差しは入れず光を取り入れる。
奥様のたっての希望で天井に天窓を付けました。
ただ、南向きに取り付けると日差しが入り必要以上に室内が高温になったり、それを防ぐための日よけなどを取り付けなければならなくなるので、北向きの屋根に取り付けました。
こうすることで日差しは入れず光だけを取り入れることが出来ます。
また順光になるので裏の木立もよりきれいに見えたりもします。