新しいのに、ちょっと懐かしい。

Concept10

新しいのに、ちょっと懐かしい。  「親の代から受け継ぐ店」

十数年前にご両親が開いたお好み焼き屋さんを娘さんが引き継ぐに当たってリニューアルしたいというご依頼。
当初は既存の建物をリフォームすることも検討されておりましたが、心機一転ということもあり愛着のある建物のあった場所にそのまま新しい建物を建て替えることにしました。
ただゼロからスタートするだけでなく、長い間積み重ねてきた愛着のあったモノを壊してゼロにしてスタートする訳で、しかもオーナーさんだけでなくこれまで愛してくれていた方々もいて、そういう方々の「思い入れ」を「思い出」に変えてしまう訳だから、ある意味その「思い出」がこのプロジェクトの最大のライバルになるようなもの。そういう方々の想いにも応えられるような新しいモノを打ち立てなければという思いもあり、いつも以上に責任を感じて挑みました。ただ今度のオーナーさんはそこにはあまりこだわらず、新しいモノを作っていきたいって意欲の方が大きいので助かりましたが。
真っ先に考えたのはカウンター席から鉄板の焼き手越しに外の木立が眺められるようにすること、そして店名でもある「おにがわら」から瓦をイメージ出来るような外観でした。
そして新しい中にもどこか懐かしい感じがするような雰囲気のあるお店になるよう、仕上げ材等にこだわりました。
「懐古建新」そんな言葉似合うような建物になったと思います。

  1. 建築概要
  2. 仕様
  3. フェイクを使う
  4. こだわりポイント
  5. 遊びごころ
  6. ちょうど良いサイズ

「親の代から受け継ぐ店」-Teppan Dining onigawara-

  • 建設地:山梨県北杜市大泉町
  • 建築面積:72.86㎡(22.04坪)
  • 延べ床面積:108.86㎡(32.93坪) 内、店舗面積:57.97㎡(17.53坪)
  • 主用途:店舗兼住宅
  • 構造:木造・在来工法・2階建て

イメージに合わせて

外装は店名でもある「鬼瓦」をイメージして瓦に見える様なガルバリウム鋼板の横張りと杉板の縦張りを組み合わせてモダンな感じを出したました。

客席の内装は腰壁と天井を杉板材にて。
その他の壁はクロス張りとなっています。

木に見せかけた床材

商売柄お店の床はどうしても油っぽくなる上、お客様には土足で入店頂く。しかも冬場は滑り止めのスパイクを履かれてくる方もいらっしゃるとのことで、店舗の客席部分の床材の選定では一考することになりました。
理想は木材を使いたが、傷やメンテナンスのことを考えると使えない、かといって塩ビの長尺シートのようなものでは味気ないし雰囲気が出ない。
色々探す中で外国製の店舗用の塩ビのタイル材が目に止まり、施工性も良さそうなでそれを採用。
張ってしまえばちょっとラフでアンティークな色と木目の板材にしか見えませんし、店舗の雰囲気作りにひと役買っています。
実際、営業されてからもお客様は気がつかないそうで、ネタバラシをすると大変驚かれるそうです。

また、エントランスの階段にはやはり同じくアンティーク調の板材に見える寒冷地対応のタイルを張りました。
こちらも言わなければ気がつかないそうです。

こうしてあえてフェイク材を使うことで建物の雰囲気は壊さずに耐久性やメンテナンス性を高めることも出来ます。

客席上部のモザイク壁


店舗の中に何かシンボリックなモノを取り入れようと思い、現場で出た木材の端材をお施主様に一枚一枚違った色に塗っていただき、それを組み合わせて客席の壁の一部にモザイク状に張ってデザインウォールにしてみました。

まずは実際に張る前に床に張り込む壁と同じ大きさのエリアを作りそこに板の組合せをシュミレーションしてみます。
幅や厚みの違う板を組み合わせ、しかも通常は表に出ない裏面をあえて表につかったりもして表情豊かに組合せていきます。そしてそれぞれの部材に番号を振って、それを元に実際の壁に貼っていきます。
こうしていくと端材も裏面も立派な仕上材に。
たまたま役がもらえなかったとはいえ同じ木材です、見方や使い方をかえれば立派に役に立つはずです。
使ってあげないのは可哀想だしやはりもったいないです。
こうして出来上がったデザインウォール。ちょっとラフなところが逆にいい感じになりました。
自分で塗って自分でアレンジした壁に仕上がってお客様もとてもご満足されたよう。
またこういう作業はやっているこちらもとても楽しいものです。

通常壁板や床板の端材はそのまま廃棄されるか、薪ストーブの薪に利用していただく程度なものです。
でもよく考えるとその端材も大切な予算に含まれているもの、廃棄したり燃やしてしまうのはもったいないです。

古き一点モノとエイジングを取り入れる



北杜市の白州町にある台が原宿で毎年秋に行われる「台が原宿市」という骨董市で見つけた古い織り機のシャトルと曲面鉋。
まずシャトルはこんな感じで風除室と客席の間の引き戸の取手に使ってみました。
このシャトルは見た瞬間に扉の引手に使えるとピンっ!ときて、たまたま会場に来ていたお施主様に早速提案して採用。

そしてお客様が気に入って購入された鉋はやはりトイレの引手に使ってみました。
こうして実際に使ってみると思った以上にいい感じになりました。
やはり使い込まれた道具の質感はなんとも言えない雰囲気と味がありますね。
何より唯一無二の一点モノというのがいいと思います。
大切に使われて現役を退いた道具たち、でもちょっと見方と使い方を変えればまだまだ使えます。

そして入り口を入って真っ先に目に入る店名にもなっている鬼瓦さん。
先代店主であるお父様が以前滋賀県のとある由緒あるお寺さんから譲り受けたものだそうです。
安永七年(1778年)に制作され二百数十年の時を経ているその鬼瓦さんを置く場所をつくるにあたり、真新しい材料ではあまりにも雰囲気に合わないので、まずは置くのに相応しく主役に負けないような脇役になる板を探してみました。
とある場所からもってきた古材の板。約25年風雨に曝されいい感じに歳を重ね、いい色と表情になってたのを見つけてきた物です。
そして背面の壁板はお施主様自らエイジング作業した新品の杉板です。
まさに時代を超えたコラボレーションがいらっしゃったお客様をお出迎えします。

住居部

二階の住居部分はステップフロアなど空間に変化を取り入れつつ、一人暮らしや二人暮らしにちょうど良いサイズと使い勝手にしてみました。
また床、天井のパイン材はプロに任せ、壁の珪藻土塗りはお施主様自ら下地調整から行われました。
さらに階段室の手すり壁のモザイクタイルもお施主様が貼られました。
こうして自ら作業されることでコストダウンを図れ、また愛着のある住まいになると思います。

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