人にやさしく、介護にやさしく。

Concept11

人にやさしく、介護にやさしく。  「兄弟姉妹が仲良く暮らす家」

ご高齢でそれぞれ皆さまちょっと身体的にハンディのある四兄弟姉妹のお住まいになる住宅です。

最初にご相談いただいた時は自分には荷が重いとお断りしようと思っていた案件です。
でも最初にお話を伺いに行った際、その時に住まわれていた住環境の悪さと皆さんの何とも暗い表情に何とかしてあげたいと思いお引き受けしました。
しかしながらこんなことを言うのは何ですが、皆様のお歳を考えればこれが最後の住まいであり、最後の大きな買い物になるということ、そして実際問題あとどのくらい住んでいただけるだろうかと言うことが真っ先に頭によぎりました。
かといってコストを抑えるため簡素な建物を建てるというのは違うし、ご高齢でましてやお身体が不自由な方もいらっしゃる中で暮らしづらい建物を作るのでは意味がない。

だからこれまでの苦労してきたことへの最後のご褒美になるような住まいを提供しようと。
そして仮にこの先お住まいになる方が減っていったとしても、どなたか親しい人を交えてのグループホームになるよう、さらに最後のお一人になった場合、建物を提供する代わりに生涯介護サービスを受けられるような、そしてさらにその先この建物を介護サービス施設としてほぼそのまま使用していただけるような建物にすれば、建物自体の資産価値は失わずに済むのではないかと考えプランを検討しました。
そして住む人が暮らし易いのはもちろん、介護サービスを提供する方々にも作業がし易い仕組みをふんだんに盛り込もうと思い掲げたコンセプトの基、住宅の基本性能を踏まえつつ、高齢化、要介護、生活スタイルの変化等々、今後の将来を見据え介護従事者の意見も取り入れて出来た「人にやさしく、介護にやさしい」住宅です。
今を生きる方だけでなく、その先の建物の将来も考える。そんな思いも込めてプランニングし、その思いに応え職人さんたちが丁寧に仕上げた住まいです。
実際に住んでいただき、皆さんの表情が明るく豊かになり、お洒落になったように感じたのが何より嬉しかったです。

  1. 建築概要
  2. 仕様
  3. キッチン
  4. 暖房設備
  5. 介護仕様
  6. 特別仕様
  7. こだわりポイント

「兄弟姉妹が仲良く暮らす家」

  • 建設地:山梨県北杜市大泉町
  • 建築面積:204.46㎡(61.85坪)
  • 延べ床面積:175.95㎡(53.22坪)
  • 主用途:一戸建ての住宅
  • 構造:木造・在来工法・平屋建て

内外総杉つくり

今回は内外装はもちろん、構造材も含めほぼ近県の国産杉材を使用しました。
杉は材質としては柔らかく傷つきやすいですが、逆に言うと肌触りも良く当然木の香りもしますので、心地いい空間作りにはもってこいだと思っています。また檜よりリーズナブルなのでコストダウンにも繋がります。
お引渡し早々は赤白の濃淡が目立ちますが、時が経つとともに落ち着いた色合いに変化します。
写真は左がお引渡時、右が一年点検の時に撮らせていただいたモノです。
自然に色が変化していくのを楽しんでいただくため、手掛かりで汚れが目立つような部分以外基本的には無塗装です。
30mmの厚みの床板もお引渡し時にはクリアのオイルステイン仕上げにいたしますが、その後は天然素材のワックス等を塗る程度にしていただき、ご自身と時間が自然のツヤといい味を出していくのを楽しんでいただくようお勧めしております。

シンプルで使い勝手優先

キッチンはシンプルで使い勝手の良いI型キッチンに、造作のワークテーブルを配置。
掃除のしやすいよう壁は一面キッチンパネルにしてあります。
ワークテーブルは可動できますので動線の幅を広く取ることも可能。

またキッチン脇のドアを開けると食品庫になってます。
さらにその食品庫から大型冷凍庫を置いたり、野菜の下処理等が出来る水場付きの土間スペースに行き来できるようになってます。

灯油ボイラー式温水パネルヒーター


暖房設備はご高齢者のお住まいということで室内で火を使わず、温風ではなくジンワリ温まる輻射熱式の物を選択。
コストバランスの良い灯油ボイラー式の温水パネルヒーターを全室に完備。家中を同じ温度にすることでヒートショックの防ぐことができます。
一般的なパネルコンベクターの他にもトイレには小型の物、玄関脇には大型の壁付けの物や脱衣室にはタオル掛け兼用の物も配備して家の中どこにいてもほぼ同じ温度になるようにしています。

温度の調整はリビングにあるメインコントロールパネルで集中管理、スイッチ一つで暖房の入り切り、温度の設定が出来るようご高齢者でも解りやすいようになってます。
もちろん各パネルコンベクターそれぞれでも温度調節が出来ますので、個人個人のお好みに温度を合わせることもできます。

現場の意見に即した仕様

玄関ポーチへのアプローチ、当初は一般的なスロープを考えておりましたが、そうするとかなり長いスロープになってしまいます。そこで介護関係者や実際に介護サービスをされている事業者さん等、実際に現場で働いておられる方に意見を聞いたところ、長いスロープはあまり好ましくなく、それならば車椅子がしっかり乗る奥行きがあり、段差の少ない階段の方が実用的であるというお話から、車椅子が昇降し易く、サービスする側も作業がしやすい形状の階段にしました。
こうすることにより、送迎の車も取り付き易くなり車椅子の昇降もしやすいとのご評価もいただきました。
南側の濡れ縁にはスロープ使って洗濯干し場まで車椅子でも行けるようにしてあります。

そして玄関ドアは車椅子対応のスライドドア、中に入るとスロープと手すりを配備してあります。
玄関を上がれば室内はほぼ全てフラットになっており、また各部屋のドアは全て大型ではありますが重量の軽いスライドドアになっていますので車椅子でも楽に移動していただけます。

スライドドアには全て大型のドアハンドルが付いております。
あまり施設っぽくならないように、持ち手部分は無垢の木製になってます。

入浴サービス対応ユニットバスとリフトアップ便座付きトイレ

ご兄弟ですでに車椅子を使用され介護サービスを受けていらっしゃる方もおられますし、皆様ご高齢ということもあり、将来やはり介護サービスを受けられることも踏まえ、入浴サービス対応の介護施設等で使用されるユニットバスルームをあえて使用しました。
一般のユニットバスでも介護対応のモノもございますが、正直あまり使い勝手がいいとは思えませんでしたし、コスト的にもさほど変わらなかったので、介護スタッフの方も使い易いこちらを選びました。
また二つあるトイレの一つを車椅子でも使い易いようにリフトアップ便座付きトイレにしました。
それぞれ一般の住宅で使用するのは県内初とのことです。
何れにしても、これらは仮に将来この建物が施設利用されるようになった場合でもほとんど改修工事が必要ないようにと考え採用いたしました。
またこうすることでこの建物の資産価値も下がらないのではないかと考えました。

断熱内戸

なぜ、雨戸は外にあるのでしょう?
冬の寒い季節、わざわさ暖かい部屋に冷たい冷気を入れて雨戸を閉めなければなりません。
雨戸なしのお宅も増えている昨今、断熱と遮光、防犯の為だけに閉めるのであれば何も外になくても、室内にあっても良いのではという考えが以前からあり、今回住まい手がご高齢者ということもあり、サッシの内側に断熱仕様の木製建具を取付けることにしました。
これにより遮光カーテンが必要なくなり、冬場の窓からの冷気侵入や熱損失も少なくなると思います。
何より寒い中、窓を開けて雨戸を開け閉めする苦労がなくなります。

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